安全帯の話

こんにちは、松澤です。

年明けから随分あいてしまいましたが、特に紹介できる様な工事を行っていなかったので、今回は工事の紹介ではなく、一般の方にはあまり関係ない話ですが、安全帯の事について少し話したいと思います。

建設現場において無視できないのが労働災害です。幸い当社では僕が入社してから大きな労災と言うのは一度も起きていませんが、あと一歩間違えたら大惨事だったかもしれないと言うのは何件かあり、いつ誰の身に降りかかるかは分かりません。

特に「墜落」「転落」と言うのは重大事故につながる危険な事故の筆頭です。

今年の1月から高所作業で必須の安全帯(命綱)の規格が一新され、旧規格のものは法令違反となり使えなくなると言う法改正がありました。

数年前からフルハーネス(後述)じゃないとダメになると言う話だけは既に聞いていて、実際の現場では既に数年前から高層建築の足場組や鉄骨などの作業に関わるとび職など筆頭に、フルハーネス型の安全帯も浸透してきてましたが、いよいよ法が施行されその使用が義務付けられました。

ただ、この改正に関しては「フルハーネスじゃないとダメ」と言うだけの認識で勘違いしてる方も多いと言う事で、僕自身の確認の為にも今回その事について投稿しようと思います。

まず、この法改正で従来の「安全帯」と呼ばれていた器具が「墜落制止用器具」と言う名称に変更となり、品物の安全基準から見直しとなったので、基本的に旧式のものはタイプ問わず殆どのものが使えなくなりました。

タイプ問わずと書きましたが、これまで安全帯と呼ばれていたものには大きく3種類あり、一つはこの胴ベルト型と言うタイプで、昔からあるタイプです。

現場でも、腰道具と一緒にこのタイプを装着してた人が多かったポピュラーなものです。

もう一つが下の写真のタイプでフルハーネス型と言うものです。

今回の法改正では、このフルハーネス型の使用が基本的に原則となりました。

最後に、電気工事や林業などで使用するのが下の写真のU字吊りと言うタイプですが、こちらは今回の改正で墜落を制止する機能はないとして、作業姿勢を確保するための器具とされ、要するに命綱としては認められなくなりました。こういう作業を行う際には上2つのいずれかの墜落制止用器具と併用しての使用が義務付けられます。

法改正に至った一番の理由としては、胴ベルト型の従来品は、あくまで地上への落下・墜落と言う最悪の事態を回避するもので、落下姿勢が危険になりやすい(頭から落ちる姿勢になってしまう)事や、落下の衝撃も腰だけで支える事になり、さらには落下時に装着位置がずれて、肋骨が折れてしまったり、腹部を圧迫され内臓を損傷してしまったり、最悪の場合、首までベルトがずり上がってしまったりと、落下を防いだのに亡くなってしまうという事例が実際にあり、問題視されていました。

そこで登場したのがフルハーネス型。支点が腰だけでなく全身なので、落下しても安全な状態で宙づりになり、衝撃も全身で分散するため宙づりになっても怪我に繋がりにくいです。

冒頭で少し書きましたが、特に勘違いされてる人が多いと言う点が、フルハーネスタイプでも、旧規格のものは今回の改正で使えなくなったと言う事です。

規格の新旧の見分けは、正規の品なら必ず安全帯のどこかに”厚生労働省「○○の規格適合品」”と言う記載があります。○○の部分が、「安全帯」と記載されているものは、旧式なので基本的にアウトです。新規格のものは〇〇の部分が「墜落制止用器具」となっています。

また、一律従来の胴ベルトタイプがダメなのかと言うとそういう話でもなく、作業床の高さ(6.75m以下)によっては、こちらも新規格のものに限ってですが、使用が認められています。

フルハーネス型の商品の多くは実際に転落した際、自由落下の距離が6m程度あるものが多く、6.75m以下の高さから落下すると足など体の一部が地面に到達してしまう危険性が高い為、そういうケースでは胴ベルト型も使用可となっています。

共通事項として、例外なく一度でも落下して衝撃が加わった器具は二度と使用してはいけないと言う決まりもあります。

また、新規格の安全帯の使用はには「特別教育」と言う資格も必要になり、ここに書いた事はその講習で習います。

最後に、フルハーネス型の安全帯は商品自体の価格が2~3万円前後するため、作業員の人数分揃えようとすると、その人数にもよりますが結構な出費になります。

そのため価格を押さえようと、有名通販サイトで購入する方も多いようですが、外国製の粗悪品も多く出回ってるため、安価なものは規格に対応していない可能性もあるため特に注意が必要です。